ある日、突然、心が大きく揺れる出来事がありました。
「自分のアイデンティティが崩れる」
そんな言葉では足りないほど、
自分の内側で何かが音を立てて崩れていくような感覚でした。
それまで当たり前だと思っていた環境や価値観に、
もう自分を合わせることも、
見て見ぬふりをすることもできなくなってしまったのです。
すると、次々と不安が押し寄せてきました。
「私、今まで何をしてきたんだろう。」
「今まで信じてきたことは、全部間違いだったの?」
「もしかして、私の考え方がおかしかったの?」
考えないようにしても、不安は静かに心を覆っていきます。
そして、私は自分自身に問いかけました。
「私の生き方は、間違っていたの?」
心の奥から返ってきた答えは、とても静かでした。
「いいえ。」
もちろん、失敗もたくさんしてきました。
後悔したこともあります。
でも、生き方そのものを否定する必要はない。
私は、その答えを信じることにしました。
そして、もう一つ大切なことに気づいたのです。
私が「違う」と感じる世界を、その人は「正しい」と思って生きている。
反対に、その人が「違う」と感じる世界が、私にとっては自然で心地よい世界なのです。
どちらが正しくて、どちらが間違っているという話ではありません。
ただ、生きてきた環境も、経験も、心のフィルターも違うから、見えている景色が違うだけ。
そう思えた瞬間、相手を変えようとする苦しさが少しずつ消えていきました。
「私はそうは思わない。でも、あなたにとっては、それが正しい世界なんですね。」
その一言を心の中でつぶやけるようになると、人との関わり方が少しやわらかくなります。
自分を責める必要も、相手を否定する必要もありません。
世界には、ひとつの正解しかないわけではないのです。
その違いを認められたとき、不思議なくらい心は軽くなります。
そして、世界は今までよりも少しだけ、やさしく見えてくるのかもしれません。